【1988年】サクラが咲いた 西村知美
~少女の内面から大人のオッサンの記憶をえぐる

あの一曲をトーク 1988年 冬 2月 西村知美 師匠 たまオネ トミー

目次
  1. 「桜」を季語にしたのは珍しくない?サクラが咲いた
  2. 「前髪のカール」だけでデートはお断り?「好きです」
この時期って梅か桜かって温暖な地方と、窓の外は猛吹雪って北国の温度差がとても大きいと思うんですよね。
その中で「桜」をモチーフにした楽曲ってとても少なくて、多分日本歌謡界ではパイオニアである楽曲じゃないかと思うんです。

今日は少し甘めのロゼのスパークリングを。すこし安物感がある方がこの曲には向いているんじゃないかな。

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「桜」を季語にしたのは珍しくない?サクラが咲いた


トミー
おおー知美ちゃんじゃん!もうさ、可愛くって可愛くってさ、でも歌は色々アレなんだけどカワイイはすべて許されるんだよ。
この曲さ、作詞:松本隆、作曲:筒美京平、編曲:武部聡志ってもう斉藤由貴ちゃんとか松田聖子さんとか歌ってもおかしくないじゃん。
師匠
あはは、トミーさんの見立ては間違いないけどさ、この曲、斉藤由貴さんでも松田聖子さんでもないじゃん。
やっぱり西村知美さんのキャラクターだからこその楽曲って感じがするんだよ。
なんといっても「桜」だよ。それまでの昭和歌謡界で「桜」を歌う楽曲はほとんどなかったんだよ。
たまオネ
たしかに日本の歌謡界って、長いあいだ桜を真正面から“恋の季語”にすることに慎重だった感じはあるよね。
戦前の「散る桜」にまとわりついたイメージ、
戦後の空気、
そして“日本的すぎるもの”への距離感。
だから70年代までは、
桜はあっても主題にはなりにくい。
そんな中で1988年2月発売。
このタイミングは絶妙なんだよ。

サクラが咲いた
西村知美
1988/2/10 (4:03) 1853762502

発売:1988年2月
「サクラが咲いた」西村知美
作詞:松本隆
作曲:筒美京平
編曲:武部聡志
師匠
なにがいいって「サクラが咲いた」って唄った後に「とりあえずとりあえず」だぜ。これ、予防線張ってる感があるんだよ。中和するというか、重くない感じにする。
どうしてもさ、桜って
・散る
・国家
・決意
みたいなものと連動しちゃう。今まで奇譚していたのは、まだまだ軍歌のような「桜」イメージが根強かったからで、1988年は「そろそろいいんじゃない?春なんだから桜をつかおう、とりあえずさ」って言ってる気がするんだよ。
だからこそ「とりあえず」ですこし軽めな曖昧さを得てるように思う。
トミー
なるほどなぁ。
たしかに「桜」「サクラ」って曲名や歌詞って、新しい曲ばかり。この曲が先鞭つけていくって、しかも実績のある作家さんが作ったのがすごいのか。
そう思うと、すこしのほほんとして思想とかが見えない西村知美さんってこの曲にうってつけのキャスティングだったのかもしれないな。
たまオネ
そうそう。もしこれを、
シリアス系のアイドルや実力派に歌わせたら
受け取り方は違ったはず。
でも西村知美ちゃんなら、
「わぁ、春だね🌸」
で終わる。
師匠
そう。桜を主義主張から「装飾品」に大胆に改造した感がある。
この曲聴いて軍国主義がーとかシュプレヒコールしてたら、何言ってるんだ?アイドルが恋愛感情唄ってるんじゃないか!って普通に思うはずなんだよ。
この曲の桜の扱いは単なるアクセサリーでしかない。
この曲があるから後輩の作家もバンドもいくらでも桜を使っていいんだって思っただろうし、その後の曲を聞いた若き作家やバンドは最初から「桜奇譚」なんか全く感じてないんだよ。
なんたって歌詞のその他の部分、くしゃみした花びらで首輪作った、きっとふたりはいい感じになるんだろうなぁって希望だけ。具体的なその後が何も無いんだよ。
トミー
物語が何も進まない。実際に咲いたのは桜だけ。
キスもしなきゃ性的な匂いも関係もない。意図してそういう曲にしてるよね。
知美ちゃんって本当に性的な売りがまったくない子だからな。処女性の塊みたいな娘。
1988年の他のアイドルってほとんど高校生までに経験ないの?って曲歌ってるわけだしな。
物語が動き出さない曲って貴重なのかもしれない。

「前髪のカール」だけでデートはお断り?「好きです」


師匠
その動かない物語の最たる曲がB面。
デートに誘われたと思しき知美ちゃん、仮病で断るんだよ。その理由は「前髪のカールがうまく決まらず」
これは本当の理由かどうかはともかく、世界一小さな理由で好きな人とのデートを断って歩みを進めない。
その慎重さってすごいよね。
トミー
A面で恋が始まりそうな予感だけなびかせて、B面は何も起こらないどころか物語止めに行ってるって、もう永遠の処女の最たるものじゃん(笑)
この当時のアイドルって、勇気を出して告白してもすれ違いで逢えないみたいな話か、優しく抱かれて云々じゃん。自分で仮病こいて何も先に進めないって曲、そうみかけないぜ。

好きです
西村知美
1988/2/10 (3:40) 1857553077

「好きです」西村知美
作詞:松本隆
作曲:筒美京平
編曲:武部聡志
たまオネ
でもさ、罪悪感あるわけじゃん。
「切れた電話を抱きしめる胸」だよ。
本当はデートしたかったし、キスもしたいし抱かれたいわけじゃん。
夢の中では饒舌、でも現実に言えないままに時間だけが流れる。
言えなかった過去

👧 知美ちゃんのキャラクターとの一致
これを他のアイドルが歌ったら、
「いや行けよ!」ってなる(笑)。
でも彼女なら成立する。
無垢というより、
臆病で真面目な子。
だから前髪が言い訳になる。
師匠
この切なさって、実は男の子の側のほうがわかったりするんだよな。
勇気があればなにか始まったかもしれないのにって思うのがオッサンの常だよ。
松本隆さんにその意識があったかはわからないけれど、前髪一本で未来が変わるという物語と、その物語を仮病で止めるって優しさだよな。
トミー
きっとこちらのほうが本命だったのかもな。
ファンにとっての知美ちゃんはこうあってほしいってのが、作家陣にもちゃんと共有されていたって感じがする。
少女の内面から大人のオッサンの記憶をえぐるんだよ。
失われた時間は帰ってこない。始まらなかった恋のほうが記憶に残るってもんだな。
たまオネ
あら、トミーさん今日は詩人ね。
でも確かに、郷愁装置なんじゃないかな。
知美ちゃんは前髪で止まる。
でも聴いてる側は、
「俺もあの時、前髪だったんだよな」
って苦笑する。
優しいよな、この切なさ。
師匠
まぁ。前髪どころか後ろ髪まで薄くなってはじめてわかるんだよ(笑)

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